「不妊」は意外に多い“待機里親”の無念
~子ども育てたいという想い~
血がつながっていなければ親子になれませんか?
養子を望んで児童相談所に来るのは、私と同じように「不妊治療を行ったものの、思うような結果を得られなかった」という人がほとんどです。
不妊治療がどれほど大変か、報道などで聞いたことがある方も多いでしょう。多額の費用がかかり、長期にわたって夫婦ともにスケジュールを調整し続ける必要があります。大変な努力にもかかわらず思うような結果に結びつかず、心身ともに疲弊し、それでも子どもが欲しいと最後のエネルギーで特別養子縁組を望んだ結果がこれでは、あまりに辛い。
その上、人生の時間は有限です。不妊治療に時間をかければかけるほど自分たちの年齢は上がります。その上でさらに養子縁組の成立を待つとすると、時間はほとんど残されていません。
もちろん特別養子縁組は子どもの福祉のための制度であり、このような夫婦の事情が最優先されるべきものではありません。
しかし、託される子どもの福祉は、育てる夫婦の間の強い愛と絆があってこそです。
それなら「子どもを育てたい」という一心で大変な努力を重ねてきた方々が、かけがえのない親子関係を結び温かい家庭を築く機会をできる限り増やしていけるよう、彼らを最大限尊重していくべきではないでしょうか。
自分たちが当事者でしたから、これが難しい問題であることはもちろん承知していました。しかし難しい問題だからこそ真剣に考えたい、という想いで私は自らあっせん団体を設立したのです。
子どもを育てるためには強い愛情はもちろん、両親の生活力が欠かせません。ですから私たちのNPOではマッチングに万全を期するために、縁組希望の夫婦に対しては面談などを通して学歴・年収などに加え、不測の事態が起きた際に助けてくれる友人、親族の有無などのより踏み込んだプライベートな情報も確認してきました。
そうして生活力をあらゆる方面から把握した上で、慎重にマッチングを行うことが子どもにとって最善だと考えたからです。
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『インターネット赤ちゃんポストが日本を救う』
著者:阪口 源太(著)えらいてんちょう(著)にしかわたく(イラスト)
親の虐待や育児放棄を理由に国で擁護している約4万5000人の児童のうち、現在約7割が児童養護施設で暮らしています。国連の指針によると児童の成育には家庭が不可欠であり、欧米では児童養護施設への入所よりも養子縁組が主流を占めています。
本書ではNPOとしてインターネット赤ちゃんポストを運営し、子どもの幸せを第一に考えた養子縁組を支援してきた著者が国の制度である特別養子縁組を解説。実親との親子関係を解消し、養親の元で新たな成育環境を獲得することができる特別養子縁組の有効性を、マンガと文章のミックスで検証していきます。